深澤直人は、1956年に山梨県で生まれ、1980年に多摩美術大学を卒業しました。彼のキャリアは、セイコーエプソンに始まります。同社で彼は、マイクロテクノロジーを搭載したテレビウォッチや小型プリンターなどの製品をデザインしました。
その後アメリカに渡り、1989年にサンフランシスコのデザイン会社ID Two(現IDEO)に入社しました。そこでは、シリコンバレーのコンピューティング&エレクトロニクス産業に関連する数々の製品を手掛けました。Appleのデザイン言語やデザインコンセプトの開発にも携わりました。
1996年に日本に戻り、IDEO東京オフィスを設立し、責任者となります。数多くの大手日本企業のデザインコンサルタントを務める傍ら、若手デザイナー向けに、デザインワークショップ「without thought」を定期的に開催しています。そこに込められた発想について彼は、次のように語っています。「デザインは感情に訴えかけるものだと思われているが、実は人は日々の環境の中で、無意識のうちに、自覚することなく、モノと結びついている。この『考えていない』状態こそが行動をスムーズにする。反対に、自分がしていることをじっくり考えているときは、行動が不自然になり、ぎこちなくなる。考えないシンプルな状態をもたらすデザインは目立たないが、人の行動にうまく絡み合い、環境にもよく馴染む。」
初回のワークショップで深澤は、壁掛式CDプレーヤーのアイデアを思い付きました。その製品は無印良品で販売され、世界中で高い人気を得ました。2004年には、ニューヨーク近代美術館のパーマネントコレクション(永久所蔵品)に選定されています。
2003年に彼は、NAOTO FUKAZAWA DESIGNを設立しました。このデザイン事務所の初期の製品であるINFOBAR 携帯電話は、日本のデザイン界を牽引しました。彼はまた、家電機器・雑貨ブランド ±0を設立し、東京に±0ストアをオープンしました。
深澤は長年、世界中の数多くの有名ブランドや企業の製品開発にも携わっており、彼がデザインした製品は数々の賞を受賞しています。マジス社(イタリアの家具メーカー)との連携により、同社のDシェープのアルミニウム押出成形技術を採用したデジャヴシリーズのホームファニシングが誕生しています。深澤は、「マジス社の押出成形があったから、このシリーズが実現した」と語っています。
デジャヴチェアは、2007年にマジスインテリアイノベーション賞ベストアイテム賞(iMMケルン)を受賞し、2008年にはドイツ連邦デザイン賞(Designpreis der Bundesrepublik)にノミネートされました。深澤は今も若手デザイナーとのコラボレーションを続けており、現在は武蔵野美術大学、多摩美術大学、東京大学大学院などで教鞭をとっています。
「良い製品はまるで気の利いた冗談のようだ。初めて見るのに、以前どこかで見たように感じる。それが新しいものであっても。」